【2026年版】無料のコンプレッサーを、正直に比べる

ミックスの困りごと

コンプレッサーが分からない。

スレッショルドを下げても、レシオを上げても、何が変わったのか分からない。とりあえずプリセットを選んで、そのまま次に進んでいる——。

あなたのせいではありません。

この記事では、いま実際に使える無料のコンプレッサーを4本比べます。そして、なぜコンプだけが分かりにくいのかも書きます。

★ 先に言っておきます。4本のうち1本は、私が作ったものです。だから「どれが一番いいか」ではなく、どれをどういうときに選ぶかを書きます。


コンプレッサーとは何か

大きい音だけを、小さくする道具です。

歌を録ると、強く歌ったところと弱く歌ったところで、音量に差が出ます。差が大きすぎると、弱いところが聞こえず、強いところがうるさいという状態になります。

コンプレッサーは、決めた大きさを超えたところだけを押さえます。すると音量の差が縮まり、全体を持ち上げても割れなくなります。

ツマミの意味

名前やること
THRESHOLD(しきい値)どこから押さえ始めるか。これより大きい音だけが対象
RATIO(レシオ)どれだけ強く押さえるか。3:1 なら、はみ出した 3 を 1 に縮める
ATTACK(アタック)押さえ始めるまでの速さ
RELEASE(リリース)押さえるのをやめるまでの速さ
MAKEUP(メイクアップ)押さえたぶん、全体を持ち上げ直す

★ 言葉で読むと簡単そうです。でも実際に回すと分かりません。次がその理由です。


★★ なぜコンプだけが分かりにくいのか

理由は3つあります。

① 変化が「時間の中」で起きる

EQ は「高い音を下げた」と一度で分かります。リバーブは「響いた」と分かります。

コンプは違います。大きい音が来た瞬間だけ押さえて、すぐ戻ります。動いている時間が短すぎて、耳が追いつきません。

② 押さえた直後に、持ち上げ直す

MAKEUP で音量を戻すので、全体の大きさは変わらないように聞こえます。

★ 「かけても変わらない」と感じるのは、たいていこれです。変わっていないのではなく、大きさが揃っただけです。

③ 数字が、耳の感覚とつながっていない

「しきい値 −18 dB、レシオ 3:1」——これが音としてどうなるかは、数字を見ても分かりません。

★★★ だから「見えること」が効きます。いま何 dB 押さえたのか、その設定がどんな形なのか。目で見えれば、耳が追いつくまでの間も手が止まりません。


選び方|3つのチェックポイント

① 動きが見えるか

  • 削った量が、時間で見えるか(いつ、どれだけ押さえたか)
  • ★ トランスファーカーブがあるか(入力→出力の関係がで分かる)
  • ゲインリダクションのメーターがあるか

★ 最低でも「削った量のメーター」は要ります。それすら無いと、効いているかどうかすら分かりません。

② 覚えたいのか、早く終わらせたいのか

目的が違えば、選ぶものも変わります。

  • 早く終わらせたい → ツマミが少ないもの
  • 仕組みごと覚えたい → 数字と表示が出るもの

③ 自分の環境で動くか

Mac なのに Windows 専用、AAX が要るのに VST3 しかない——動かなければ、どんなに良くても意味がありません。


無料のコンプレッサー4本【2026年版】

★ 順位ではありません。タイプが違うだけです。

いちばん簡単 ─ Klanghelm DC1A

ツマミが2つだけ。考える前に音が変わります。

→ 公式サイト(無料): https://klanghelm.com/contents/products/DC1A

  • Windows / Mac
  • CompressRelax の2つが中心。しきい値もレシオもありません
  • 「とりあえず掛ける」ための道具

迷いようがないのが利点です。ドラムやベースにさっと掛けて、太くしたいだけならこれで足ります。

★ ただし数字が出ないので、何が起きているかは覚えられません。「良くなった気がする」で終わります。


動きが見える ─ SORYNO COMP Free(私が作ったものです)

いま何が起きているかを、2つの絵で出します。

SORYNO COMP Free の画面全体。左が時間のグラフ、右がトランスファーカーブ
SORYNO COMP Free。左のグラフは、オレンジが押さえた量、緑が出力、灰が入力です。PRO バッジの付いたつまみは Pro 専用で、灰色で見えています。

→ ダウンロード(無料): https://pinzu.booth.pm/

1つめ:時間のグラフ

  • オレンジ … いつ、どれだけ押さえたか(ゲインリダクション)
  • … 出力
  • 灰色 … 入力
  • 点線 … しきい値

★ 押さえた瞬間がオレンジで盛り上がります。「効いていない」のか「効きすぎている」のかが、一目で分かります。

2つめ:トランスファーカーブ

★★ これが効きます。設定の意味が「形」で見えます。

横が入力、縦が出力。まっすぐな線は「何もしていない」状態です。しきい値を超えたところから、線が寝ます。この寝かせ方がレシオです。

★★★ そしていまの信号がどこにいるかが、点で表示されます。「レシオ 3:1」という数字が、曲がった線のどのあたりを通っているかとして見えます。

トランスファーカーブ。点線のしきい値で青い線が寝て、白い点がいまの信号の位置
トランスファーカーブ。縦の点線がしきい値で、そこから青い線が寝ます。この寝かせ方がレシオです。白い点が、いまの音がどこを通っているかを示します。

操作するのは6つです。

  • IN(入力)/THRESH(しきい値)/RATIO(レシオ)
  • ATTACKRELEASE(時間)
  • MAKEUPOUT(戻す量・出力)

★ プリセット 14種。楽器の名前がそのまま付いています——「Vocal Smooth」「Drum Punch」「Bass Sustain」「Master Glue」など。

不利なことも書いておきます。

  • Windows 専用・VST3 のみMac 版・AAX 版はありません
  • ダウンロードに 無料の pixiv アカウントが要ります(BOOTH で配っているため)
  • コード署名証明書をまだ取っていないので、初回起動時に Windows の警告が出ます
  • ニー(KNEE)・先読み・サイドチェイン・キャラクター・MIX は Pro 専用です

(★ 画面には灰色で見えています。何が使えないかは隠していません)

★★ Mac の方は DC1A か Kotelnikov を使ってください。ここは選びようがありません。


音の定番 ─ TDR Kotelnikov

無料コンプの定番として、長く名前が挙がり続けている1本です。

→ 公式サイト(無料): https://www.tokyodawn.net/tdr-kotelnikov/

  • Windows(VST2・VST3 / 32・64bit)/Mac(VST2・VST3・AU・AAX)
  • Peak と RMS で、アタックとリリースを別々に設定できます
  • サイドチェインのハイパスフィルター、Dry Mix、Quality 設定
  • Sum/Diff・Left・Right のチャンネルモード

バスやマスターに掛けたときの自然さで評価されています。「掛けたことが分かりにくい」——コンプとしてはこれが褒め言葉です。

★ ただし設定項目が多く、意味を知らないと使いこなせません。はじめての1本には向きません。

★★ 有料の GE 版もありますが、無料版だけで十分に実用です。


特殊だが強力 ─ Xfer Records OTT

普通のコンプではありません。3つの帯域に分けて、大きい音は下げ、小さい音は上げる(アップワード)処理をします。

→ 公式サイト(無料): https://xferrecords.com/freeware

  • Windows / Mac
  • Depth(効きの深さ)を回すだけでも形になります

音が前に出て、キラッとします。エレクトロ系では定番です。

★★ ただし かけすぎると一気に不自然になります。そして普通のコンプの練習にはなりません。別の道具だと思ってください。


比較表

DC1ASORYNO COMP FreeKotelnikovOTT
タイプ最小動きが見える定番・自然3帯域・特殊
削った量の時間グラフ記載なし帯域ごとの表示
トランスファーカーブ★★ ○(現在位置つき)記載なし
しきい値の数値✕(無い)帯域ごと
レシオの数値✕(無い)
ツマミの数26多い中くらい
はじめての1本に
仕組みを覚えるのに
Windows
Mac
形式VST/VST3/AU/AAXVST3のみVST2/VST3/AU/AAXVST/AU
入手の手間そのままpixivアカウントそのままそのまま

★ 「記載なし」は、公式に書かれていないという意味です。無いとは限りません。実際に入れて確かめるのがいちばん確実です。


使い方|3ステップ

★ どのコンプでも順番は同じです。

1. しきい値を、効き始めるまで下げる

まずレシオを 3:1 くらいにして、しきい値を下げていきます。

★ 削った量の表示を見てください。大きいところで 3〜6 dB 動くあたりが目安です。

  • まったく動かない → まだ高すぎます
  • ずっと動きっぱなし → 下げすぎです

2. アタックとリリースを合わせる

★★ ここがいちばん分かりにくいところです。目安だけ書きます。

速く(短く)遅く(長く)
ATTACK頭の勢いも潰す。まとまるが、地味に頭を通す。パンチが残る
RELEASEすぐ戻る。元気だが、暴れやすいゆっくり戻る。落ち着くが、重い

★ 迷ったら ATTACK 10〜30 ms / RELEASE 100〜250 ms から始めてください。

3. 押さえたぶんを戻す

MAKEUP で、掛ける前と同じ大きさに戻します。

★★ ここを忘れると、比較になりません。音量が違うと、人は大きいほうを「良い」と感じます。同じ大きさに揃えてから、掛けた/切ったを比べてください。


よくある質問

Q. 掛けても変わらない気がします

たいてい2つのどちらかです。

  1. しきい値が高すぎて、何も押さえていない → 削った量の表示を見てください
  2. 押さえたぶんを MAKEUP で戻していない → 音量が小さくなっただけです

★★ 削った量の表示があるものを使うと、これは一発で分かります。

Q. レシオはいくつがいいですか

2:1 〜 4:1 が扱いやすいです。

8:1 を超えると、コンプというよりリミッターに近い働きになります。はじめは 3:1 で固定して、しきい値だけを動かすのが分かりやすいです。

Q. どれか1つだけ選ぶなら

  • Mac の方DC1A(簡単)か Kotelnikov(本格的)
  • 仕組みごと覚えたいSORYNO COMP Free(Windows のみ)
  • 考えずに太くしたいDC1A
  • エレクトロで音を前に出したいOTT

Q. コンプは何本挿せばいいですか

トラックに1本、バスに1本が基本です。

同じトラックに何本も挿すと、どれが何をしているか分からなくなります。


まとめ

  • ★★ コンプが分かりにくいのは、変化が時間の中で起きて、目に見えないからです
  • 選ぶ基準は ①動きが見えるか ②覚えたいのか早く済ませたいのか ③環境
  • 削った量の表示があるものを使ってください。それが無いと、効いているかどうかすら分かりません
  • Mac なら DC1A か Kotelnikov。ここは選択肢が限られます

★ この記事で見た画面は、SORYNO COMP Free(Windows / VST3・無料)のものです。期限も、使用回数の制限も、ライセンス認証もありません。

ダウンロード → https://pinzu.booth.pm/

★ 繰り返しますが、Mac の方は DC1A か Kotelnikov を選んでください。こちらには Mac 版がありません。


コンプで直らないときは

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