ミックスがこもる。
200 Hz あたりを下げてみた。少しスッキリした。でもまだこもっている。高いところを上げてみた。シャリシャリしただけで、抜けは変わらない——。
★ こもりには2種類あります。そして片方は、EQ では直りません。
まずどちらなのかを判定してください。そこを飛ばすから、直らないのです。
★★ こもりの2種類
| 種類A | 種類B | |
|---|---|---|
| 正体 | 低中域が多すぎる | ★ 高域が足りない |
| どこで起きる | ミックスの段階 | ★★ 録音の段階 |
| EQ で直るか | ★ 直る | ★★ 直らない |
| やること | 引き算する | 別の手を使う(後述) |
★★★ 種類B を EQ で直そうとすると、ノイズだけが増えます。
無い音は、上げても出てきません。あるのはノイズだけだからです。
★ どちらか判定する方法
方法1|アナライザーで見る(確実)
トラックにアナライザー付きの EQ を挿して、鳴らします。
| 見えるもの | 種類 |
|---|---|
| 200〜500 Hz に大きな山がある | ★ 種類A(多すぎる) |
| ★ 5 kHz より上が、ほとんど無い | ★★ 種類B(足りない) |
| 両方 | 両方です。先にAから直します |
★ アナライザーの無い EQ では判定できません(→ 無料のイコライザーを、正直に比べる)。
方法2|耳で確かめる(簡易)
ハイパスで 500 Hz 以下を全部切って聴いてみてください。
- ★ 残った音が「シャリシャリ」して聞こえる → 高域はあります。種類A
- ★★ 残った音が「スカスカ」で何も聞こえない → 種類B
★ 判定できたら、ハイパスは元に戻してください。判定用です。
種類A|低中域が多すぎる(EQ で直る)
★★ こもりの正体は、たいてい 200〜500 Hz の渋滞です。
この帯域には、ほとんどの楽器が同時に居ます。ギター、ピアノ、ボーカルの太さ、シンセパッド、スネアの胴——全部です。
手順1|要らない低音を切る
ボーカル・ギター・シンセに、ハイパスを入れます。
| トラック | 切る目安 |
|---|---|
| ボーカル | 80〜100 Hz 以下 |
| ギター(エレキ) | 80〜120 Hz 以下 |
| ピアノ・シンセパッド | 100〜200 Hz 以下 |
| ★ ベース・キック | ★★ 切らない(切っても 30 Hz 以下まで) |
★★ ここが本体のトラックまで切らないこと。ベースの低音を切ると、曲が痩せます。
手順2|200〜500 Hz を下げる
★ 全部のトラックを少しずつではなく、多いトラックだけを下げます。
- Q は広め(1.0 前後)
- 2〜4 dB 下げる
- ★ 下げて → 戻してを繰り返し、下げすぎていないか確かめる
★★ 下げすぎると、今度は薄っぺらくなります。「こもりが取れた」と「痩せた」は紙一重です。
★ 誰を下げるか、どう決めるか
ボーカルは下げないでください。主役です。
代わりに、ボーカルとぶつかっている伴奏を下げます。ギターやシンセパッドが候補です。
★ 詳しい手順は → ボーカルが埋もれる。上げても直らない理由
★★ 種類B|高域が足りない(EQ では直らない)
録音した時点で、高い音が入っていません。
原因は録音側にあります。
- マイクが安い、または高域が出ないタイプ
- ★ マイクから遠い(距離があると高域から先に減ります)
- 部屋が吸いすぎている(カーテン・布団の中で録るなど)
- 元の音源がすでに劣化している(mp3 から起こした素材など)
★★ EQ で上げるとどうなるか
ノイズが増えます。
音が無いところを持ち上げても、出てくるのはサーというノイズとエアコンの音です。シャリシャリするだけで、抜けは良くなりません。
★★★ これが「高いところを上げても直らない」の正体です。
では、どうするか
★ 正直に、効く順に書きます。
| 順 | 手 | 効き目 |
|---|---|---|
| ★★ 1 | 録り直す | ★★★ 圧倒的に速い。マイクを近づけるだけでも変わります |
| 2 | サチュレーション/エキサイターを使う | ★ 無い高域を作り出す。多少は前に出ます |
| 3 | EQ で上げる | ★ ほぼ効きません。ノイズが増えます |
★★ 1が身も蓋もないのは分かっています。でも、2時間かけて EQ をいじるより、10分で録り直すほうが速い——これは本当です。
★ 録り直せない場合(ライブ音源、もらった素材など)は 2 を試してください。ただし期待しすぎないこと。無いものは無いです。
★ 楽器別|どこを触るか
★ 「◯◯がこもる」で調べて来た方は、ここを見てください。
| 楽器 | ★ 触る場所 | やること |
|---|---|---|
| ボーカル | 200〜400 Hz | 下げる。★ ただし下げすぎると細くなります |
| ボーカル(抜けない) | ★ 伴奏の 1〜3 kHz | ★★ ボーカルではなく伴奏を下げる |
| ベース | 200〜400 Hz | 下げる。★ 80 Hz 以下は切らない(本体です) |
| ギター(エレキ) | 200〜500 Hz / 80 Hz 以下 | 下げる/ハイパスで切る |
| ピアノ | 200〜400 Hz | 下げる。★ 低音が他とぶつかりやすい |
| シンセパッド | ★ 200〜500 Hz を大きめに | ★★ こもりの主犯になりやすい。思い切って下げる |
| ドラム全体 | 300〜500 Hz | 下げる。★ キックの 60〜80 Hz は残す |
★★ 迷ったら、シンセパッドとギターから疑ってください。帯域が広く、居場所を取りすぎていることが多いです。
★★ 見落とされがちな原因
① モニター環境がこもっている
★★★ これは他の記事があまり書きません。
こもったヘッドホンで作ると、ミックスは明るくなりすぎます。逆に明るいヘッドホンで作ると、こもったミックスになります。
★ 「自分の環境では良いのに、スマホで聴くとこもる」——これが起きているなら、プラグインではなくモニター側の問題です。
確かめ方:
- スマホのスピーカー
- イヤホン
- 車
- ★ 他人の環境
★★ 複数の場所で聴いてください。1つの環境だけで判断すると、必ずずれます。
② リバーブのかけすぎ
★ リバーブは音を後ろに押しやり、輪郭をぼかします。
「こもる」と感じたら、一度すべてのリバーブを切って聴いてみてください。それでスッキリするなら、原因はリバーブです。
③ トラックが多すぎる
★★ 20トラックを全部鳴らして、全部聞こえるミックスはありません。
★ 使っていないトラック、いてもいなくても変わらないトラックは、消すか、思い切って下げてください。
④ 最後に足している(順番の問題)
★ EQ で整える前に、コンプやリミッターを掛けていませんか。
順番はこうです。
1. フェーダー(プラグインを全部切って音量だけで)
2. EQ(引き算)
3. コンプ
4. ディエッサー
5. リミッター(マスターに1本)
★★ 詳しくは → ボーカルが埋もれる。上げても直らない理由
★ やってはいけないこと
全部のトラックに同じ EQ を掛ける
★ 「200 Hz を下げる」を全トラックにやると、曲全体が痩せます。多いトラックだけを下げてください。
高域をどんどん上げる
★★ 上げると音量が増えるので、「良くなった」と錯覚します。比べるときは必ず音量を揃えてからにしてください。
ハイパスを全部に入れる
★ ベースとキックにハイパスを入れると、低音の土台が消えます。そこは切る場所ではありません。
まとめ
- ★★★ こもりには2種類。先に判定してください
- 種類A:低中域が多すぎる → EQ で直る
- ★ 種類B:高域が足りない → EQ では直らない。録り直しが最速
- ★ 判定はアナライザーで見るか、500 Hz 以下を切って聴く
- ★★ 200〜500 Hz を、多いトラックだけ 2〜4 dB 下げる
- ★ シンセパッドとギターから疑う
- ★★ モニター環境を疑う。複数の場所で聴いてください
★ この記事でやることは、すべて無料のプラグインでできます。

コメント