【2026年版】無料のイコライザーを、正直に比べる

ミックスの困りごと

イコライザーを開いた。

でも、どこを触ればいいか分からない。

とりあえず高いところを上げてみる。ちょっと良くなった気がする。でも次の曲では同じことをしても良くならない——。

★ この記事では、いま実際に使える無料のイコライザーを4本比べます。そして、どこを触ればいいかも書きます。

★ 先に言っておきます。4本のうち1本は、私が作ったものです。だから「どれが一番いいか」ではなく、どれをどういうときに選ぶかを書きます。


★★ 先に:バンドは、多ければいいわけではありません

無料のイコライザーは、いまとても優秀です。16バンド、ダイナミック処理、8種類のフィルター——ここまで無料で手に入ります。

★ ただ、バンドが多いことは、初心者にとって利点になりません。

理由は単純です。

どこを触ればいいか分からない人に、触れる場所を16個渡しても、迷うだけ。

★★ 実際のところ、ミックスでよく起きる困りごとは3つに集約されます。そしてそれぞれ、触る場所は決まっています。

困りごと触る場所やること
こもる・もやっとする200〜500 Hz あたり下げる(3〜5 dB)
低音が濁る・重い80 Hz 以下ハイパスで切る
キツい・耳に刺さる2〜5 kHz あたり少し下げる(2〜4 dB)

★★★ この3つができれば、ミックスの困りごとの大半は片付きます。必要なバンドは、低・中・高の3つです。

★ もちろん、慣れてくれば足りなくなります。そのときに増やせばいい。最初から16バンド必要な人は、いません。


イコライザーとは何か

音の「高さごと」に、音量を変える道具です。

同じ音でも、低い成分・中くらいの成分・高い成分が混ざっています。イコライザーは、そのうち特定の高さだけを上げ下げします。

覚えるべきツマミは3つだけ

名前やること
FREQ(周波数)どの高さを触るか。単位は Hz(ヘルツ)
GAIN(ゲイン)上げるか、下げるか。単位は dB
Q(キュー)どれくらいの幅を触るか。大きいほど狭く、ピンポイントに

★ ハイパス(HPF)とローパス(LPF)は、ある高さから下/上をまるごと切るものです。低音のゴロゴロを取るときは、これがいちばん早い。


★ 上げるより、下げる

★★ これだけは覚えてください。

足りないものを上げるより、邪魔なものを下げるほうが、うまくいきます。

理由は2つ。

  1. 上げると、その分だけ音が大きくなり、割れやすくなる
  2. ★★ 人は「大きいほう」を良いと感じてしまう。上げると、良くなっていなくても良くなった気がします

★ 「ボーカルを前に出したい」なら、ボーカルを上げるのではなく、ぶつかっている楽器の同じ高さを下げる。これが基本です。


選び方|3つのチェックポイント

① 画面に音が出ているか(アナライザー)

★ いま鳴っている音が、どの高さにどれだけあるかが見えるかどうか。

これが無いと、耳だけで場所を探すことになります。慣れないうちは非常に難しい。

② いまどこを触っているか、迷子にならないか

★★ バンドが増えるほど、「いま回しているツマミがどこの担当か」が分からなくなります。

  • バンドと画面が色で対応しているか
  • 触っている場所がグラフ上で光るか

③ 数値が見えるか

「200 Hz を 4 dB 下げた」と数字で分かると、次に活かせます。

★ ツマミの位置だけだと、毎回ゼロからやり直しになります。


無料のイコライザー4本【2026年版】

★ 順位ではありません。タイプが違うだけです。

たくさん要るなら ─ ZL Equalizer 2

16バンドのダイナミックEQ。しかもオープンソースです。

→ 公式(無料): https://zl-audio.github.io/plugins/zlequalizer2/installation/
→ 配布: https://github.com/ZL-Audio/ZLEqualizer/releases

  • Windows / macOS / Linux、VST3・AU
  • 16バンド、8種類のフィルター、ステレオモード、可変スロープ
  • ダイナミックEQ(大きいときだけ下げる、といった処理ができます)
  • ライセンスは AGPLv3(オープンソース)

無料でここまでは、正直すごいです。有料の定番と比べられることもあります。

★★ ただし初心者向けではありません。触れる場所が多すぎて、「どこを触ればいいか分からない」人には、かえって迷いが増えます。

慣れてから来る場所だと思ってください。


3つで終わらせる ─ SORYNO EQ Free(私が作ったものです)

バンドは3つ。ハイパスとローパスが付いて、それだけです。

→ ダウンロード(無料): https://pinzu.booth.pm/

  • LOW / MID / HIGH の3バンド + HPF / LPF
  • 常時表示のリアルタイムアナライザー
  • FREQ / GAIN / Q が数値で表示されます

★★ 画面の色が、ツマミの色と対応しています。

  • LOW=紫MID=青HIGH=緑
  • グラフの背景も、同じ色で塗り分けられています
  • 各バンドの位置に ①②③の丸が出ます

★★★ だから、「いま回しているツマミが、画面のどこを触っているか」で迷いません。バンドが増えると分からなくなる——という問題が、そもそも起きません。

SORYNO EQ Free の画面。LOW=紫・MID=青・HIGH=緑で、グラフの背景も同じ色に塗り分けられている
SORYNO EQ Free。ツマミの色と、グラフの背景の色が対応しています(LOW=紫・MID=青・HIGH=緑)。各バンドの位置に①②③の丸が出ます。

★ プリセット 10種。★ 名前が困りごとそのものです——「De-Mud(もやもや取り)」「Low Cut」「High Tame(キツさを抑える)」「Presence」「Warm」「Bright」「Master Glue」など。

不利なことも書いておきます。

  • Windows 専用・VST3 のみMac 版・AAX 版はありません
  • ダウンロードに 無料の pixiv アカウントが要ります(BOOTH で配っているため)
  • コード署名証明書をまだ取っていないので、初回起動時に Windows の警告が出ます
  • 3バンドで足りなくなったら、乗り換えが必要です(★ そのときは ZL Equalizer 2 か TDR Nova へ)

★★ Mac の方は SlickEQ か ZL Equalizer 2 を使ってください。ここは選びようがありません。


アナログ風の音 ─ TDR VOS SlickEQ

3バンド。ただし考え方が違います。

→ 公式(無料): https://www.tokyodawn.net/tdr-vos-slickeq/

  • Windows / macOS、VST2・VST3・AU・AAX
  • 3バンド+フィルター。複数の「EQモデル」を切り替えられます
  • 数字で追い込むというより、音の色を付ける道具

かけると「良い感じ」になります。マスターに軽く挿すだけでも変わります。

★ ただしアナライザーが無いので、どこを触っているかは耳で判断します。「こもりを 300 Hz で取る」といった作業には向きません。


狙って抑える ─ TDR Nova

4バンドのダイナミックEQです。

→ 公式(無料): https://www.tokyodawn.net/tdr-nova/

  • Windows / macOS、VST2・VST3・AU・AAX
  • スペクトラム表示としきい値のカーブがあり、表示は充実しています
  • 「大きいときだけ下げる」ができます

★★ 普通のEQとの違いはここです。普通のEQはずっと下げますが、Nova はうるさいときだけ下げられます。

★ ディエッサー代わりにも使えます(記事①でも触れました)。

★ ただし設定項目が多く、意味を知らないと使いこなせません。はじめての1本には向きません。


比較表

ZL Equalizer 2SORYNO EQ FreeSlickEQTDR Nova
バンド数163(+HPF/LPF)34
アナライザー○(常時)
バンドと画面の色が対応記載なし★★ 記載なし
FREQ/GAIN/Q の数値一部
ダイナミック処理
はじめての1本に
慣れてから
Windows
Mac
Linux
形式VST3/AUVST3のみVST2/VST3/AU/AAXVST2/VST3/AU/AAX
入手の手間GitHub からpixivアカウントそのままそのまま

★ 「記載なし」は、公式に書かれていないという意味です。無いとは限りません。


使い方|困りごとから引く

「EQの使い方」ではなく「困りごとの直し方」で覚えてください。そのほうが早いです。

こもる・もやっとする

200〜500 Hz を下げます。

★ Q を少し広め(1.0 前後)にして、3〜5 dB 下げる。下げすぎると痩せるので、下げて → 戻して を繰り返して決めます。

低音が濁る・重い

ハイパスで 80 Hz 以下を切ります。

★ ボーカルやギターに20 Hz 付近の音は要りません。切るだけで、ベースやキックの居場所ができます。

★★ ただしベースとキックは切りすぎないこと。そこが本体です。

キツい・耳に刺さる

2〜5 kHz を 2〜4 dB 下げます。

★ サ行だけが刺さるなら、EQ ではなくディエッサーの出番です(→ 記事①「無料のディエッサー」へ)。

抜けない・前に出ない

★★ 上げないでください。

ぶつかっている楽器の、同じ高さを下げます。ボーカルが抜けないなら、ギターやシンセの 2〜4 kHz を下げる。場所を空けるほうが、うまくいきます。


よくある質問

Q. どこを触ればいいか分かりません

上に書いた3つ(こもり・低音・キツさ)から始めてください。

★★ それでも分からないときは、アナライザーを見て、飛び出しているところを探すのが早いです。

Q. 上げるのと下げるの、どちらがいいですか

下げるほうです。上げると音が大きくなり、良くなっていなくても良く聞こえてしまいます。

Q. Q(キュー)はいくつがいいですか

  • 下げるとき … 広め(0.7〜1.5)。自然になります
  • 問題を探すとき … 狭く(5 以上)して、上げながら動かす。★ 見つけたら、下げ直してください。探すときだけ上げます

Q. どれか1つだけ選ぶなら

  • Mac / Linux の方ZL Equalizer 2SlickEQ
  • どこを触ればいいか分からないSORYNO EQ Free(Windows のみ)
  • 音に色を付けたいSlickEQ
  • うるさいときだけ抑えたいTDR Nova

Q. EQ は何本挿せばいいですか

1トラックに1本が基本です。

同じトラックに何本も挿すと、打ち消し合っていても気づけません。


まとめ

  • ★★ バンドが多いほど良い、は初心者には当てはまりません。触る場所が決まっているかのほうが大事です
  • ミックスの困りごとは3つ(こもり・低音・キツさ)。★ 3バンドあれば足ります
  • 上げるより、下げる。上げると「良くなった気」がしてしまいます
  • 無料のEQは本当に優秀です。ZL Equalizer 2 は16バンドでオープンソース
  • Mac / Linux なら ZL Equalizer 2 か SlickEQ。ここは選択肢が限られます

★ この記事で見た画面は、SORYNO EQ Free(Windows / VST3・無料)のものです。期限も、使用回数の制限も、ライセンス認証もありません。

ダウンロード → https://pinzu.booth.pm/

★ 繰り返しますが、Mac の方は ZL Equalizer 2 か SlickEQ を選んでください。こちらには Mac 版がありません。


EQで直らないときは

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