【2026年版】無料のピッチ補正を、正直に比べる(VST2 の落とし穴)

無料のピッチ補正を、正直に比べる ミックスの困りごと

音程を直したい。調べると「無料ならこれ」と、同じ名前がいくつも出てきます。

そのとおりに入れた。DAW のリストに出てこない。

★★★ その原因は、たぶん音でもパソコンでもありません。プラグインの「形式」です。

★ 私は Windows 向けの無料プラグインを作っている者です。ただしピッチ補正は作っていません。だからここでは、売りたいものが何もありません。実際に4本とも落として、中身を開いて書きます。


★★ 先に、いちばん大事なこと

★★★ その無料プラグイン、VST3 ですか。

2024年11月に出た Cubase 14 から、VST2 は既定で無効になりました。Steinberg(Cubase を作っている会社)の公式ページに、こう書かれています。

Cubase 14 の公開(2024年11月6日)をもって、VST2 形式の廃止に向けてもう一歩進めました。

Cubase / Nuendo 14 および 15 では、VST2 プラグインは既定で無効になっています。

VST3 版に移ることを強くお勧めします。

(Steinberg ヘルプセンター。2026年9月6日に取得)

★★ さらに Mac では、VST2 は Rosetta モードでしか使えません。Apple Silicon のネイティブ動作では読み込まれません(これも同じ公式ページに書かれています)。

他の DAW でも同じ流れです。いま VST2 しかないプラグインは、「使えなくなる日が決まっている道具」だと思ってください。


★★★ 実際に落として、中身を開きました

紹介する前に、公式の配布物を自分で取得する——このブログの決まりです。今回もそれで、紹介され続けている情報とのズレが2つ見つかりました。

無料かWindowsMac★ VST3実測したこと
Graillon FREE 3.2★ 無料版あり○(インストーラ)★★ 確認できず(下記)ZIP 約 54 MB を取得
GSnap★★★ 入っていないZIP を開いたら dll 1つだけ
KeroVee 1.61なし★★★ 入っていないZIP を開いたら dll 1つだけ
MAutoPitch○(と明記)記載が見つからない★★ 専用アプリが要る

Graillon FREE 3.2 ─ ★ まずこれを試す

→ 公式: https://www.auburnsounds.com/products/Graillon.html

★★★ 注意:多くの記事が「Graillon 2」と書いていますが、いま配られている無料版は 3.2 です。2026年9月6日に公式の ZIP を取得して確かめました(Graillon-FREE-3.2.zip・約 54 MB)。中身は Windows のインストーラ(exe)/Mac のインストーラ(pkg)/Linux 版でした。

Mac でも動きます。私の作ったものは Windows のみなので、ここは正直に書いておきます。

★ 有料版もあります($29・公式表記)。無料版から始めて構いません。

★★ ただし、VST3 かどうかは確かめられませんでした

公式の表記は「VST / AAX / AU / LV2」で、VST3 とは書かれていません。ZIP の中で .vst3 があったのは Linux 版だけで、Windows 版はインストーラなので入れる前に中身は見られません。

★★★ 確かめ方をお渡しします。入れたあと、このフォルダを開いてください。

C:\Program Files\Common Files\VST3

★ ここに .vst3 が入っていれば VST3 です。見れば分かります。


GSnap ─ ★★ VST2 だけです

→ 公式: https://www.gvst.co.uk/gsnap.htm

昔から定番の無料オートチューンです。公式サイトも生きていて、Windows(64/32bit)・Mac(Apple Silicon 対応と明記)・Linux が置かれています。最終更新は 2024年10月9日でした。

★★★ ただし、ZIP を開いたら中身は GSnap.dll 1つだけでした。GSnapWin64.zip・412,899 bytes・2026年9月6日に取得)

VST3 は入っていません。Cubase 14 以降では、設定を戻さないと出てきません。

できること:音程を段に合わせる/MIDI で狙った音程に寄せる。★ 公式に「単音にしか効きません」と明記されています(和音やドラムには効きません)。

★★ すでに使っていて手に馴染んでいるなら、そのままで構いません。これから始める方には、形式の点で勧めにくいです。


KeroVee 1.61 ─ ★ 日本語。ただし Windows の VST2 だけ

→ 公式: https://www.g200kg.com/jp/software/kerovee.html

日本の開発者(g200kg さん)による、日本語のピッチ補正です。★ 説明も日本語なので、最初の1本としては分かりやすいです。2025年9月16日に 1.61 が出ていて、いまも更新されています。

★★★ ZIP を開いたら KeroVee.dll と説明書2つだけでした。kerovee161.zip・893,519 bytes・2026年9月6日に取得)

  • VST2 のみ。VST3 はありません
  • ★★ Mac 版もありません(Windows だけ)

★ 「パフュームのあれ」のような強くかける使い方に向いています。公式にも、自然な補正への対応を 1.60 で強化したと書かれています。

★★ フォルマント補正があるので、男声⇄女声の変換にも使えます。


MAutoPitch ─ ★★ もらうまでが遠い

→ 公式: https://www.meldaproduction.com/MAutoPitch

「無料」と公式に明記されています。ただし2026年9月6日に確かめたところ、単体の ZIP では配られていませんでした。

★★★ 受け取るには、専用の管理アプリ(MPluginManager)を入れて、有効化まで行う必要があります。公式にも「バージョン 17.00 から、すべてのプラグインはこの新しいアプリでしか入れられません」と書かれています。

★★ そして、公式ページにプラグイン形式(VST3 かどうか)の記載を見つけられませんでした。「無料だから」と気軽に入れて、アプリの導入と有効化まで付き合うことになります。

★ 悪いものだと言っているのではありません。手間の量が他と違う、という話です。


★★★ その前に、お使いの DAW を見てください

★★ ピッチ補正が最初から入っている DAW は、けっこうあります。

新しく何かを入れる前に、エフェクトの一覧を開いて「pitch」「tune」で探してください。入っていれば、それがいちばん確実です。形式の心配も、導入の手間もありません。

★ このブログは無料プラグインを紹介していますが、すでに持っているもので済むなら、それがいちばん良いと思っています。


★★ 選び方

こういう方おすすめ
とりあえず1本Graillon FREE。★ 入れたあと VST3 フォルダを見て確かめる
Mac をお使いGraillon FREE(GSnap も Mac 版がありますが VST2 です)
日本語の説明が欲しいKeroVee。ただし Windows の VST2 のみ
強くかけて遊びたいKeroVee / GSnap
Cubase 14 以降をお使い★★★ VST3 があるものを選ぶ。無ければ設定で VST2 を戻す必要があります

★ かけすぎに注意

★★★ ピッチ補正は、強くかけるほど機械的になります。

  • 外れているところだけ直す
  • ★ 「全部きっちり合わせる」と、歌の表情が消えます
  • ★★ かけたあと、必ず元と聴き比べる。音量を揃えてから比べてください

★ そして——ピッチ補正は、録り直しには勝てません。何度も直すより、もう一度歌ったほうが速いことがよくあります。


まとめ

  • ★★★ 選ぶ前に「VST3 があるか」を見る。Cubase 14 以降は VST2 が既定で無効です(公式)
  • ★★ 定番として紹介されている GSnap と KeroVee は、開けたら VST2 だけでした(実測)
  • 「Graillon 2」は古い情報。いまの無料版は 3.2 です
  • ★★ Graillon の Windows 版が VST3 かは確かめられませんでした。入れたあと C:\Program Files\Common Files\VST3 を見てください
  • MAutoPitch は専用アプリが要ります(無料ではありますが、手間が違います)
  • ★★★ まず自分の DAW を見る。入っていれば、それがいちばん確実です

★ ピッチを直したあとの工程は、こちらに書きました。

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