ミックスが、なんとなく薄い。音は揃っているのに、前に出てこない。
調べると「サチュレーター」という言葉が出てきます。足りないのは”歪み”だと。
そこで「無料 サチュレーター」で調べて、いちばん上に出てきたものを押した。アカウントを作れと言われた——。
★★★ この記事は、そこを先に書きます。音の good/bad より前に、そもそも押すだけで手に入るのかです。
★ 私は Windows 向けの無料プラグインを作っている者です。★ EQ・コンプ・リミッター・ディエッサーの4種で、この記事に出てくるものは作っていません。
★★ そもそもサチュレーターは何をするのか
★ ここまでの記事で扱ってきた道具は、すべて「整える」道具でした。
EQ … 多いところを減らす
コンプ … 大小の差を詰める
リミッター … 天井を超えないようにする
ディエッサー … サ行だけ抑える
★★★ サチュレーターだけが「足す」道具です。
ほんの少しだけ歪ませて、無かった倍音を作ります。その結果——
- ★ 音量を上げずに、大きく聞こえる
- ★ 細い音に芯ができる
- ★★ デジタルっぽさが減る
★★ 「テープ」系も仲間です。テープに録ったときの歪みと、高域の丸まりを真似たもので、サチュレーションの一種だと思って構いません。
★★★ 手に入れ方が、いちばん違います
★ 音の話の前に、ここを表にします。他の記事には書かれていません。
| 押すだけで落ちるか | 実測(2026年9月6日) | |
|---|---|---|
| ★★ Klanghelm IVGI | ★★★ 落ちます(登録なし) | ZIP 4,700,073 bytes |
| ★★ CHOW Tape Model | ★★★ 落ちます(GitHub) | exe 10,646,528 bytes |
| Softube Saturation Knob | ★★ 落ちません | アカウント作成+専用アプリが要ります |
| Techivation T-Saturator | ★ 落ちません | アカウント登録が要ります |
| ★★★ CamelCrusher | ★★★ もう手に入りません | 公式サイトが別の会社のページへ転送されます |
★★ どれも「無料」です。ただし必要なものが違います。そこだけ先に知っておいてください。
Klanghelm IVGI ─ ★★ まずこれ。押すだけで落ちます
→ 公式: https://klanghelm.com/contents/products/IVGI.html
公式に freeware と明記されています。アカウントも、メールアドレスも要りません。ボタンを押すと、そのまま落ちてきます。
- 2.5.0(同梱の changelog より 2023年1月24日)
- ★ 取得した ZIP は 4,700,073 bytes。中身は
IVGI2-installer.exe1つ - Windows / macOS の両方があります
★★ 音は「うっすら」が得意です。マスターに薄く掛けて、全体に芯を出すのに向いています。★ 入力の大きさに応じて反応が変わる作りなので、掛けっぱなしでも不自然になりにくいです。
★★★ 同じ会社の無料は、実は4本あります。IVGI(サチュレーション)・DC1A(コンプ)・MJUC jr.(チューブコンプ)・TENS jr.(スプリングリバーブ)★ 上位記事はどこも IVGI しか挙げていませんが、4本ともあります。
CHOW Tape Model ─ ★★ 「テープ」が欲しいならこれ
→ 公式: https://chowdsp.com/products.html#tape
テープレコーダーの物理モデルです。★ オープンソース(GPL-3.0)で、中身が公開されています。GitHub の星は 1,421。
- 2.11.4(2023年11月5日)。★ 取得した exe は 10,646,528 bytes
- ★ 公式の説明に VST3・AU・CLAP・LV2、Windows / macOS / Linux の記載
★★ テープらしい効きが、はっきり出ます。
- サチュレーション(歪み)
- ★ ワウ・フラッター(テープのゆれ)
- ★ 高域の丸まり
★ 掛けすぎると、すぐ分かります。それが良いところでもあります。まず強く掛けて、戻してくるのが分かりやすいです。
★★ 不利なことを書きます。最終リリースは 2023年11月です。★ 開発そのものは続いています(2025年4月にも更新が入っています)。
Softube Saturation Knob ─ ★★ 定番。ただしアカウントが要ります
→ 公式: https://www.softube.com/plug-ins/saturation-knob
★★★ 「無料 サチュレーター」で、いちばん多く名前が挙がるのがこれです。つまみが1つと、3つのモードだけ。迷いようがありません。
★★ ただし、押すだけでは手に入りません。公式にこう書かれています。
Saturation Knob は Softube Central で無料で入手できます。
アカウントを作るかログインして、Softube Central をダウンロードしてください。
(公式ページより。2026年9月6日に確認)
★ つまり——
1. Softube のアカウントを作る(メールアドレスが要ります)
2. 専用アプリ「Softube Central」を入れる
3. その中から Saturation Knob を入れる
★★ 悪いという話ではありません。手間の量が他と違う、という話です。★ 公式に VST3・AAX・AU、Windows / macOS の記載があります。
Techivation T-Saturator ─ ★ 新しい。会員登録が要ります
→ 公式: https://techivation.com/t-saturator/
2024年に出た、新しい無料サチュレーターです。公式に FREE と明記されています。
★ 入力の大きさに左右されにくい作りだと説明されています。★ 公式に VST3・AAX・AU、Windows / macOS の記載。
★★ こちらも、会員ページを通ります。サイトに「My Account」「Redeem Free Plug-ins」があり、登録してから受け取る形です。
★★★ CamelCrusher ─ もう手に入りません
★★ 1年前の記事にも「無料とは思えない完成度の名機」として載っています。実際、長いあいだ定番でした。
★★★ ですが、2026年9月6日に確かめたところ、公式サイト camelaudio.com は別の会社の製品ページへ転送されました。開発元がもう存在しません。
★ どこかに転がっているファイルは見つかるかもしれません。ただし——
- 公式の配布ではありません
- サポートも更新もありません
- ★★ 中身が元のままである保証もありません
★★★ これから始める人には勧めません。
★ このブログでは、同じことが何度も起きています。「無料」として紹介され続けているのに、実際には手に入らないもの——リミッターの記事でも、ピッチ補正の記事でも見つかりました。紹介する前に、自分で押す。それだけで防げます。
★★ 使い方は「ほんの少し」
★★★ サチュレーターで失敗する原因は、ほぼ全部「掛けすぎ」です。
| やること | 目安 |
|---|---|
| ★★ 量 | ★★★ かかっているか分からないくらい。分かった時点で掛けすぎです |
| どこに挿すか | ★ まずボーカルかベース。1トラックずつ |
| ★ マスターに挿す | ★★ うっすらだけ。掛けると全部に効きます |
★★ 必ず、音量を揃えて比べてください。サチュレーションは音量が上がったように感じさせるので、揃えずに比べると、必ず「良くなった」と錯覚します。
★★★ 足す前に、引けないか考えてください。「薄い」と感じる原因が帯域の渋滞なら、サチュレーションでは直りません。
★ 要らない場合も書いておきます。すでに歪んでいる音(ギターのアンプ、ドラムのサンプル)には、たいてい要りません。
★ 選び方
| こういう方 | おすすめ |
|---|---|
| ★★★ とにかく試したい(登録したくない) | ★ Klanghelm IVGI。押すだけで落ちます |
| テープの質感が欲しい | ★ CHOW Tape Model |
| つまみ1つがいい | Softube Saturation Knob(★ アカウントと専用アプリが要ります) |
| 新しいものを試したい | Techivation T-Saturator(★ 登録が要ります) |
| ★ まず DAW を見たい | ★★★ それが正解です。サチュレーションや「ドライブ」は、多くの DAW に入っています |
まとめ
- ★★★ 「無料」でも、押すだけで手に入るとは限りません
- ★ 押すだけ:Klanghelm IVGI / CHOW Tape Model
- ★ アカウントが要る:Softube Saturation Knob(+専用アプリ)/ Techivation T-Saturator
- ★★ もう手に入らない:CamelCrusher(公式サイトが別会社へ転送)
- ★★ サチュレーターだけが「足す」道具。EQ・コンプ・リミッターは「整える」道具です
- ★★★ 掛けすぎが失敗の原因。分かった時点で掛けすぎです
- ★★ 音量を揃えて比べる。揃えないと必ず錯覚します
- ★ すでに歪んでいる音には要りません
★ 整える側の道具は、こちらに書きました。


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